CASE-J

Area Expert Meeting

実地医家の知っておきたい心不全の診断と治療−日本人の心臓を護る−in 長野県東北信

Discussion-3 心不全の診断

BNPは簡便で、わかりやすい指標

池田

今までのお話から心不全やその予備軍を早く見つけ、適切な治療をする必要があるのですが、その診断の流れ、実地医家の先生がいかに心不全状態を診断するかについて、吉岡先生、解説をお願いします。

吉岡 図4 心不全診断の流れ( 日本循環器学会心不全治療ガイドライン)

左心不全は、肺静脈のうっ血による呼吸困難が主症状になります。うっ血が目立たない場合でも心拍出量が低下していれば全身倦怠感、易疲労感などの症状が現れます。診察や問診では、呼吸困難を中心として、これらの症状をとらえることが重要です(図4)。呼吸困難は、発作性、夜間、労作時などがあり、ひどくなれば起座呼吸になります。身体所見では、浮腫、頸静脈怒張、肺のラ音、V音ギャロップ(奔馬調律)などの有無をみることが重要です。血圧、脈拍数のほかに、パルスオキシメーターによるSpO2 測定も、非常に重要だと思います。それらによって心不全が疑われれば、検査として、胸部X線撮影、心電図、BNP(brain natriureticpeptide:脳性ナトリウム利尿ペプチド)の測定を行います。その上で次の検査として心エコー検査を行います。心エコーは、収縮能や拡張能も詳細に調べることができますが、循環器専門医でなければ難しいといえます。その点、BNP は簡便で、わかりやすい指標になると思います。

池田

米国のフラミンガム研究では、心不全の診断に関して、大基準と小基準が提唱されていますが、これについて三澤先生から説明いただけますでしょうか。

三澤

大基準としては、夜間発作性呼吸困難、頸静脈怒張、ラ音、心拡大、急性肺水腫、奔馬調律V音聴取などが挙げられています。また、大または小基準として、治療に反応して5日間で4.5kg以上体重が減少すること、小基準として、下腿の浮腫、夜間咳嗽、労作時の呼吸困難、胸水、肺活量低下、頻脈が挙げられています。1つの大基準と2つ以上の小基準を満たす場合、心不全と診断すると提唱されており、これは簡便に診断する基準になると思います。

池田

本当に心不全であると診断するには、心臓の機能低下を客観的にみることが必要であり、通常は心エコー検査が用いられますが、どのように使っていますでしょうか。

疋田

心エコー装置を使っている診療所は多くないと思いますが、腹部用のエコー装置でも左室の大きさや肥大の評価はできると思います。心臓の大きさ、特に左室の大きさや左室の壁肥大のチェックは重要です。左室拡張末期径は、55mmを超えると異常と考えられ、心臓の中隔壁−後壁間の厚さは11mmを超えると異常と考えられます。

心臓の動きに関しては、拡張末期径と収縮末期径の差を拡張末期径で割った左室内径短縮率が30%を超えると、収縮が悪くなっていると考えられます。動きの低下が部分的に生じているようだと、虚血の可能性も考える必要があります。また、浮腫があると、下大静脈の拡張が見られます。ドップラー装置が付いているエコー装置であれば、弁膜症の逆流などシャント疾患の評価も可能になります。

拡張能はパルスドップラーなどで左室流入血流を観察し、急速流入期波(E波)と心房収縮期波(A波)の比を測定することによってある程度推測できますが、専門的になります。

池田

近年、血中BNP濃度の測定が可能となり、保険適応も認められました。心不全の診断が行いやすくなりましたが、この意義についてはどうでしょうか。

佐々木 図5 心不全患者におけるBNP 値と生存率( 国立病院機構長野病院)

BNPは心室から出るホルモンで、心室の伸展刺激によって合成・分泌され、血管拡張作用と利尿作用を有します。心不全の診断・病態把握に使われるようになり、BNPと同様にNT-proBNP(ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N 端フラグメント)も使われます。BNPが100pg/mL以上であれば、心不全が症状にかかわっている可能性が大きいとされています。我々の病院の心不全患者約127人についてBNP値を200と500pg/mLをcut off値としてカプラン・マイヤー法で生存率を解析してみました。BNP値200pg/mL以上の群と未満の群の生存曲線には有意差はみられず、500pg/mL以上の群と未満の群の生存曲線には有意差がみられるので(図5)、我々の病院のデータからすると、BNP値500pg/mL以上では、予後に注意が必要だと考えています。

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