
 

南都 伸介 先生
大阪大学
先進心血管治療学教授
/関西労災病院
循環器科部長
瀧原 圭子 先生
大阪大学 保健センター/循環器内科准教授
上田 恭敬 先生
大阪警察病院
循環器科部長
和泉 匡洋 先生
大阪府立成人病センター
循環器内科副部長
平岡 久豊 先生
財団法人住友病院
循環器内科部長
廣岡 慶治 先生
国立病院機構大阪医療センター
循環器科
山田 貴久 先生
大阪府立急性期総合医療センター
心臓内科部長
伊藤 彰 先生
大阪市立総合医療センター
循環器内科部長
南野 哲男 先生
大阪大学
循環器内科講師
冠動脈疾患の治療では、PCIやCABGによる治療が大きく進歩したが、一次予防と二次予防の重要性があらためて強調されるようになっている。冠動脈疾患の発症予防やPCI後の予後改善では、どのような対応が必要なのか。大阪地域の循環器専門の先生方に、解説と討論をお願いした。
全身的なコントロールが重要に
南都
現在、冠動脈疾患の治療として、薬物療法、冠動脈インターベンション(PCI)、バイパス手術(CABG)という3つの大きな柱があります。PCIでは薬剤溶出性ステント(DES)が使われるようになって再狭窄が大きく減少し、治療、検査のありようが大きく変わってきました。特に新規病変の早期発見と抑制が大きな課題になってきたといえます。それに伴って、全身的なコントロールが重要視されるようになり、薬物療法に関しても多くのエビデンスが出てきています。これらのことを踏まえて、冠動脈疾患に一次予防と二次予防の両面から取り組んでいくことが重要になっています。
心血管イベントに大きく影響する糖尿病、 CKDへの対応を
南都
まず始めに、瀧原先生から冠動脈疾患の一次予防についてお話をお願いします。
瀧原
高血圧は冠危険因子として重要な位置を占めており、その治療は厳密にされなければならないといえます。心血管イベントに対する降圧治療の効果を日本人において検討した大規模臨床試験として、ハイリスク高血圧患者においてARBのカンデサルタンとCa拮抗薬のアムロジピンを比較したCASE-J があります。その結果では、主要評価項目(複合心血管系イベント)において有意差はありませんでしたが、全死亡は、約3年後からARB群において抑制傾向がみられています。また、BMIが高い群において、ARB群の全死亡率がCa拮抗薬と比べて大きく抑制されていることが注目されます(図1)。
ここで、冠危険因子としても重要である肥満について注目したいと思います。我が国では、メタボリックシンドロームは、肥満(ウエスト周囲径での判定)に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常(高トリグリセリド血症、低HDL血症)で規定されていますが、これらの危険因子の集積とともに脳・心血管イベントが増すことが示されています(図2)。
我々は、大阪大学職員健診でメタボリックシンドロームについて調査していますが、男性では、ウエスト周囲径85cm以上の人は、30代でも32.6%、40代では49.4%となっています。このように、若い世代からメタボリックシンドロームの予備軍は非常に多くなっています。ウエスト周囲径85cm以上で、さらに2つ以上の危険因子を持つメタボリックシンドロームは、50代では43.2%、全体では31.4%の頻度でした(図3)。
CASE-Jにおいては、BMIが高い肥満群において糖尿病新規発症率が、Ca拮抗薬と比べてARB 群で有意に抑制されていて(図4)、メタボリックシンドロームと同様に糖尿病も心筋梗塞の大きな危険因子であり、この結果は大変重要だといえます。
また最近、CKD(慢性腎臓病)が冠危険因子として非常に注目されています。CASE-Jでは、ARB群において、CKD合併患者における心血管イベント発生率の抑制傾向が示されています。大阪大学附属病院である1日の循環器内科外来54人、内分泌・代謝内科外来29人、合計83人の患者でみると、CKDの頻度は48%(40人)でした。このようにCKDは日常診療でも多くみられます。CKDを合併する高血圧症患者で単剤治療されている場合、ARBの使用が83%、ACE阻害薬が17%でした。このように、降圧薬の選択において、心血管イベントの発症に大きく影響する糖尿病、あるいはCKDの合併を考慮する必要があるといえます。
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