PCI後の予後を大きく悪化させるCKDや糖尿病
南都
次に、冠動脈疾患に対するPCIの現況について上田先生よりご解説いただきます。
上田
PCIでは、ステントの時代になって再狭窄率は約1割減ったといわれ、さらにDESの時代になって、10%以下にまで減少しました。ベアメタルステント(BMS)を使用した場合、糖尿病群では、非糖尿病群と比べてMACE(主要心血管イベント)やインターベンションの頻度が高くなりますが、DESを使うと、それらが十分抑制されます。糖尿病では、特に3枝病変になるとPCIよりもバイパス手術の適用と言われていたのが、DESによって変わってきました。
ただDESに関して大きな問題になってきたのはステント血栓症です。特に、留置1年以降に発症する遅発性ステント血栓症が問題になっています。年間0.6%ぐらいの頻度で発症し続けると報告されており、致命的合併症となるために、頻度は低くても問題となります。抗血小板薬を中断するとリスクが高くなるともいわれています。
血管内視鏡で冠動脈の病変を観察すると、心筋梗塞、不安定狭心症などでは9割以上の症例に破綻した黄色プラークがみられます。また、安定狭心症でも約6割に黄色病変が認められ、破綻して血栓形成を伴っている場合もあります。BMSを留置した場合、ほとんどの例では約3カ月でステント内は血栓のつかない白色の新生内膜によって覆われますが、DESの場合には、新生内膜の形成は十分でなく、留置12カ月でも20%ぐらいの例に血栓形成がみられます。これらの血栓はステント血栓症の発症につながる可能性がありますが、どういった人で発症するのか、あるいは本当にこういった血栓から発症しているのかについてはまだ解明されていません。PCIの予後を大きく悪化させる危険因子としては、CKDや糖尿病がありますので、これらの面からの検討も必要です(図5)。
血栓のつきやすい高度の黄色病変はスタチンによって退縮して、しだいに正常に近い白色の病変になっていくことが示されていますので、こういった動脈硬化の退縮によって、PCIの予後は改善できると考えています。
PCI予後改善のためのステント・薬剤の選択
南都
DESの時代になって再狭窄は克服されつつありますが、死亡率や心筋梗塞の発症率の抑制に関しては、PCIの有用性を示すデータは少ないといえます。その背景に、プラークが数カ所にあり、1カ所だけPCI治療をしても、心筋梗塞や死亡を回避できないという問題があります。こうした患者さんでは、冠動脈全体あるいは全身の血管に対する管理が必要です。そのような点で、高血圧の治療をいかに行うかは非常に重要ですが、各施設で降圧薬とステントの選択はどのようにされているでしょうか。
和泉
PCI後の患者さんでは、二次予防目的でARBを優先的に使っています。ステントの選択ですがACS(急性冠症候群)ではBMSを使いますが、その他の場合には、基本的にはDES を使っています。
平岡
我々の施設では、PCIの3割程度にBMSを使っています。DESは、従来のシロリムス溶出性ステント(SES)に加えてパクリタキセル溶出性ステント(PES)も使えるようになりましたが、日本では再狭窄に関するデータなどが、まだあまり出されていないために、大半はSESを使っています。
廣岡
我々の施設での2006年、2007年のデータでは、BMSが約42%、DESが約50%です。初回の血管径が3mm 以上あり、diffuse long、細小血管でない場合は、基本的にBMSを使うようにしています。
山田
糖尿病合併患者さんでは、第1選択薬として、インスリン抵抗性の改善が報告されているARBを使用するようにしています。我々の施設では2007年に約300例のPCI を行いましたが、ACSなど緊急症例はほとんどBMSだけを使います。ただ、全体の9割はDES で、糖尿病患者以外でも多く使用しています。