伊藤
2007年のAHA(米国心臓協会学術集会)において、東京女子医科大学の関連施設で行われたHIJCREATE試験の結果が報告されました。この試験は、高血圧を合併した冠動脈疾患患者においてARB(カンデサルタン)を投与した治療と投与しない標準治療を比較した日本人対象の大規模臨床試験です。前向き非盲検無作為群間比較法(PROBE法)によって行われ、対象者は、冠動脈造影によって確定診断された高血圧合併の冠動脈疾患患者(20〜80歳)です。対象者の冠動脈疾患は急性冠症候群(ACS)と安定冠動脈疾患(stableCAD)で広い範囲の冠動脈疾患を含んでいます。また、高血圧は収縮期血圧≧140mmHg、拡張期血圧≧90mmHgのどちらか一方または両方、あるいは降圧薬による治療を受けていることとされました。降圧目標値は130/85mmHg未満とされています。
主要評価項目は主要心血管イベント(MACE)とし、これに含まれるのは心血管死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症・心不全・脳卒中・その他の心血管イベントです。また、副次評価項目は冠血行再建術と糖尿病新規発症とされました。
対象者(2,049人)は無作為化されたのち、カンデサルタンをベースとした治療群(カンデサルタン群)1,024人と標準治療群1,025人に分けられ、4.2年間(中央値)追跡されました。追跡不能は1%未満と非常に少なく、質の高い試験であるといえます。
患者背景は、両群とも平均年齢は約65歳、男性が約80%を占め、BMI の平均は約25(kg/m2)、危険因子保有の割合は糖尿病約40%、高コレステロール血症約60%、喫煙約40%などとなっており、危険因子を多く保有しているといえます。また、特徴的なこととして、両群ともPCIの施行歴が8割以上、バイパスの施行歴も10%以上で、対象者の約9割に冠血行再建施行歴がありました。心筋梗塞の既往者は約40%で、冠動脈病変の重症度はかなり高い人が多いといえますが、左室駆出率(EF)は約55%で、心機能はそれほど低下していないといえます。カンデサルタンの用量は、75%の対象者では8mg/日未満でした。標準治療群は、ARB投与は許可されていませんが、71%にACE 阻害薬が投与されています。
その試験結果は、カンデサルタン群と標準治療群で降圧に差はなく、主要評価項目のMACEは、有意差はありませんが、カンデサルタン群において、標準治療群よりも約11%のリスク減少となっています(図6)。そして、注目されるのは、糖尿病新規発症のリスクが、カンデサルタン群で63%有意に減少したことです(図7)。
さらに、カンデサルタン群と標準治療群の中のACE阻害薬群との比較も行われ、MACEにおいては、主解析結果とほぼ同様であり、糖尿病新規発症も、主解析結果と同様、カンデサルタン群で有意に少ないことが示されています。
忍容性と安全性の評価では、カンデサルタン群はACE阻害薬群と比べて有害事象、空咳、投与中止などが有意に少なく、カンデサルタンの方が優れていることが示されています。
サブ解析として、腎機能別の比較も行われ、クレアチニンクリアランス60mL/分未満のCKDに相当する対象者では、カンデサルタン群においてMACEのリスクが21%有意に減少しています(図8)。この結果は、CKDを有する冠動脈疾患患者におけるカンデサルタンの有用性を示しています。