CKD合併例におけるMACE抑制の意義
和泉
久山町研究では、CKDを合併している患者さんは、12年間の冠イベントの発症が、合併していない人の12%に対して35%となっており、CKDは冠イベント発症の強い危険因子であることが示されています。そこで、冠疾患患者さんとCKDの関連を検討しました。対象は我々の施設で2005年1月〜9月にPCIを施行して、PCI前とPCI 1年後に血清クレアチニンを測定し得た113例(男性95例、女性18例、平均年齢70.9歳)で、CKDの頻度と、その推移を調べてみました。平均GFR(mL/分/1.73m2)は、PCI前が63.1で、後が60.9でした。日本腎臓学会CKD診療ガイドのステージ分類別にみるとステージ1(GFR≧90)は9%、ステージ2(GFR 60.89)は53%、ステージ3(GFR 30.59)は34%、ステージ4(GFR 15 .29)は4%で、GFR60未満は38%でした。
ステージ2群の経過をみると、約7割はGFRが維持されており、ステージ3に進んだのは27%でした。ステージ3群は維持が56%、ステージ2への改善が36%、ステージ4への進行は8%です(図9)。我々の施設では、PCI施行患者さんに対して二次予防目的で基本的にARBを投与しておりますが、血圧が低いためにARBを使えない患者さんもいました。そのような場合に悪化している可能性もあります。今後、ARBの投与、糖尿病合併との関連でCKDの推移を解析する必要があると考えています。
伊藤
腎機能低下のあるハイリスク患者さんにおいて、ARBがACE阻害薬よりも有効であることは、HIJ-CREATEの結果から言えると思います。
廣岡
HIJ-CREATEの腎機能別サブ解析での、MACEの詳細がわかればいいと思います。腎臓内科の先生から、ACE阻害薬よりもARBのほうがいいと聞いていますし、我々の実感でも腎機能障害がある人にはACE阻害薬よりもARBのほうが投与しやすいといえます。
伊藤
カンデサルタンの平均投与量は5mg/日ですが、これが本当に至適な用量かどうかという問題もあります。非常に低い用量でも、このような効果が得られたということはいえると思います。
瀧原
降圧を目的とせずに、カンデサルタン4mg/日というような少ない用量を、臓器保護の観点で使用されることもありますか。
平岡
心筋梗塞後のリモデリングや慢性心不全の予防を目的として、血圧が低くてもできるだけACE阻害薬やARBは使うようにしています。血清クレアチニンが1.5mg/dLと高く、尿蛋白が出ている場合や、糖尿病性腎症と考えられる人にはACE阻害薬あるいはARBを投与していますが、それよりもっと前の段階から積極的に投与すべきかなと考えています。ただ、用量依存性があるのかどうか、ごく少量の投与でもよいのか、そのあたりのデータが必要だと思います。
注目される炭酸水素ナトリウムの有用性
瀧原
それでは、次の話題に移りたいと思います。先生方は、PCIで造影剤を使われていると思いますが、「造影剤腎症の予防」について山田先生からご意見をおうかがいします。
山田
欧州放射線学会は、1998年に、造影剤腎症防止のガイドラインを発表しています。危険因子として血清クレアチニン値の上昇(特に糖尿病性腎症で血清クレアチニン値が1.5mg/dL以上あるいはeGFRが60mL/分以下)、脱水状態、うっ血性心不全、70歳以上、腎毒性を有する薬剤の併用(NSAIDなど)があげられています。予防のために、従来から12時間前から等張の生理的食塩水による水分補給が行われています。造影剤の量の調節も必要になり、体重別、血清クレアチニンなどを基準にして、大量投与しないようにするべきであるといわれています。予防薬として、さまざまなものが挙げられていますが、効果は確立されていません。最近注目されているのは、炭酸水素ナトリウムを用いた水分補給です。1時間前から炭酸水素ナトリウムを用いて水分補給すると、NaClを用いた水分補給と比べて87%の有意なリスク減少がみられたと報告されています。
我々は、緊急症例で検討しましたが、やはり同程度のリスク減少が得られました。対象者の8〜9割はACS患者さんで、炭酸水素ナトリウム(154mEq/L)を用いて、造影剤使用1時間前から3mL/kg/hで1時間、術中あるいは術後6時間は1mL/kg/hで6時間水分補給すると、対照群(NaCl)では29例中10例(34.5%)に造影剤腎症が発症していますが、炭酸水素ナトリウム群では30例中2例(6.6%)にしか発症しておらず、炭酸水素ナトリウム群では81%のリスク減少となりました。透析導入と死亡を1次エンドポイントとして長期予後を検討した結果でも、対照群では、1次エンドポイントの発生率が有意に高くなっています。炭酸水素ナトリウムは非常に安価であり、費用対効果が非常に大きいので、使われるべきだと考えています。