檜垣
わが国では、世界に類をみない高齢化に加え、過食や運動不足による肥満者が増えることで、心血管イベントが増加することが懸念されています。
ここ四国は、日本のなかでも高齢化が非常に進んだ地域で、四国4県の心疾患による死亡率は全国でも上位を占めています。2006年度人口動態統計確定数から都道府県別の心疾患の死亡率(人口10万対)をみると、1位が愛媛県、2位が高知県、そして香川県が11位、徳島県が12位となっています。平均寿命をみても、男性では香川県以外の3県で、女性でも徳島県と愛媛県で全国平均を下回っています。
そこで本日は、四国循環器研究会10周年記念として世話人の皆さんと四国の心血管イベントを予防するためには、どのようにすべきかをディスカッションしたいと思います。
最初に、来年度の日本老年病学会の会長をつとめられる土居先生から「高齢化の現状と心臓」というテーマでレクチャーしていただきます。
土居
現在、本邦には65歳以上の高齢者が約2,500万人、75歳以上の後期高齢者が約1,000万人おり、30年後には5人に1人が、四国では4人に1人が、後期高齢者になると推測されています。
ご存知のように、高齢者が増えますと循環器疾患の最終像である心不全が増加しますが、近年、高齢になるほど拡張期不全が増えてくることが明らかになっています(後藤葉一: 循環器専門医, 112, 281-289, 2003.)。また、心不全の背景には高血圧症と虚血性心疾患があることがJ-CARE のデータから明らかになっています(TsutsuiH. et al.: Circ. J., 71, 449-454, 2007.)。
高知大学老年病科では、1990年から自治体と共同で「香北町健康長寿計画」というプロジェクトを行っています。香北町は人口約6,000人、3人に1人が65歳以上の高齢者という山間部に近い町です。このプロジェクトの目的は、高齢者が自立して生活できる「健康寿命」を延ばす為に、何が重要かを検討することです。
既にいくつかのデータを発表していますが、例えば、要介護発症の予測には、家庭血圧の測定が有効で、家庭収縮期血圧が138mmHg以上になると、要介護になる確率が高くなることが明らかになっています。また、後期高齢者では起立性低血圧と共に起立性高血圧も5年後の要介護発生、あるいは生命予後と深く関連していることが明らかになっています。
我々はまた1992年に高知急性心筋梗塞研究会を立ち上げて、登録研究を行っています。そこで、急性心筋梗塞に対する再潅流療法の推移(1992〜2003年)をみますと、92年当初はほとんどが血栓溶解療法でしたが、97年頃からインターベンション治療が半数を超えるようになり、さらに01年からはステント治療が主流となっています。また、ステント治療が増え、さらに県内の救急搬送システムや地域連携が整備されるにつれて、後期高齢者に対する再潅流療法の施行率も高くなり、約10年で倍以上になっています(図1)。一方、再潅流療法を受けた後期高齢者の院内死亡率は、10年で半減しています。急性心筋梗塞を含めて虚血性心疾患に対して地域ぐるみで取り組むことは、非常に大切だと思います。
従って、高齢者の健康寿命を長くするには、特に高血圧症と虚血性疾患に対する治療が大切であり、そのバックに全身の動脈硬化が隠れていることを考慮して、多臓器の保護、すなわち全身の血管を保護する集学的薬物治療が重要だと思われます。