CASE-J

Area Expert Meeting

冠動脈疾患に対する新たな治療戦略 -日本人の心臓を護る-in 埼玉

Short Lecture-1

高血圧と心臓

檜垣

心臓を護るためには、その基礎疾患である高血圧を治療することが非常に重要となります。そこで次に、「高血圧と心臓」というテーマで、お話しください。

河野 図2 左室心筋重量係数(LVMI)変化量(左室肥大を有する患者:3年後) 図3 HIJ-CREATE  冠動脈疾患におけるACE 阻害薬に対するARBのエビデンス

土居先生がご指摘のように、高血圧は左室肥大の原因となって拡張能障害を惹起し、さらに高血圧が持続すると収縮能障害を伴って心不全に至ります。現在、慢性心不全の予後は、薬物療法の進歩でかなり改善されています。実際、カンデサルタンは、本邦における心不全の予後を、プラセボに比して有意に改善することがARCH-Jの成績から明らかです(Matsumori A. et al.: Eur. J. Heart. Fail. 5, 669-677,2003.)。さらに、心不全への進展を防ぐことが、高齢者における健康寿命を延ばすことですから、早期に高血圧を治療して左室肥大を防ぐ、あるいはその進展を抑制することが非常に大切だと思われます。その意味で、カンデサルタンがアムロジピンに比して、左室心筋重量係数(LVMI)を有意に減少させるというCASE-Jの副次評価項目の成績は(図2)、日常診療に活用すべきエビデンスだと思います。

一方、冠動脈疾患に対するACE阻害薬の有効性は、既に多くの大規模臨床試験で証明されていますが、ARBについては疑問視する議論もありました。そこで次に、昨年のAHAのLate Breaking Clinical Trialsessionで発表されたHIJ-CREATE 試験について解説します。

本試験は、本邦における高血圧合併冠動脈疾患症例(冠動脈造影で虚血病変を確認)を対象とした大規模臨床試験で、対象をカンデサルタン群1,024例と標準治療群1,025例に分けてPROBE法で検討しています。

主要評価項目は心血管イベント、副次評価項目は冠動脈血行再建と糖尿病の新規発症です。

HIJ-CREATEの特徴は、欧米のトライアルであるPEACE、EUROPE、HOPE試験などと比べて、PCI実施例が83%と非常に多く、本邦における実態をよく反映していることです。

また、標準治療群の71%にACE阻害薬が投与されていましたので、ACE阻害薬とARBの比較試験ともいえます。その結果、血圧の推移は両群間に差はなく、共に良好なコントロールがみられました。主要評価項目である心血管系イベントの累積発現率は、統計的有意差はないものの標準治療群に比して、カンデサルタン群で11%のrisk reductionがみられました(図3)。

しかし副次評価項目である、糖尿病の新規発症率は標準治療群に比してカンデサルタン群で有意に抑制されていました。さらに、カンデサルタン群とACE 阻害薬投与群を比べたサブ解析でも、糖尿病の新規発症率はカンデサルタン群で有意な抑制がみられています。また、後で大蔵先生から詳しく話があると思いますが、腎機能が低下している症例(Ccr<60)では、カンデサルタン群で心血管イベントの発現率が有意に抑制されていました。

つまり、日本人の冠動脈疾患合併患者に対してカンデサルタンはACE阻害薬と同等もしくはそれ以上の有効性があることが証明されたといえます。従って、このような降圧薬を基礎治療薬として用いることで、心血管イベントのハイリスク患者さんを作らないことが、四国4県の心疾患死亡率を下げることにつながると思われます。

檜垣

ありがとうございます。慢性心不全の治療、あるいは心血管イベントの抑制にカンデサルタンが有効だということですが、ARBのなかで唯一カンデサルタンが慢性心不全治療の効能を取得している理由は、どのようにお考えですか。

河野

やはり、慢性心不全に対する多くのエビデンスをもっていること、24時間にわたって確実に血圧をコントロールできる降圧薬だから、と考えられます。

檜垣 図4 起床時血圧管理はカンデサルタンが優れる

カンデサルタンは、24時間にわたって血圧を確実にコントロールするというご指摘ですが、私どもは早朝高血圧に対してどのようなARBが最も有効かを検討しています(Okura T.et al.: Jpn. Pharmacol. Ther.,34, 1081-1085, 2006.)。その結果、起床時の家庭血圧管理にカンデサルタンが最も優れていることが明らかになっています(図4)。

そこで次に、カンデサルタン(8mg/日)を第1次薬として併用療法を行う場合、どのような降圧薬が最も有効かを検討しました(E-CAT試験)。対象は本態性高血圧症例58例で、対象をカンデサルタン増量群(4mg追加)、Ca拮抗薬追加群、サイアザイド系利尿薬追加群、に分けて検討しています。その結果、3群とも血圧は同等に低下しましたが、併用6ヵ月後にカンデサルタン増量群およびCa拮抗薬追加群で、炎症ホルモンである血清TNF-αの低下が認められました。従って、代謝系への影響を考慮すると、カンデサルタンの増量、あるいはCa拮抗薬の併用が有効だと思われます。

一覧に戻る
©2007-2008 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.
このサイトはMacromedia社のFLASHを使用しています。
FLASH PLAYERは無料でダウンロードできます。