浜重
現在、冠動脈疾患の治療法としてはPCIが主流で、本邦でも年間15万件以上行われています。PCI導入当初はさまざまな問題があり、特に再狭窄が非常に大きな課題でしたが、薬剤溶出ステント(DES)の導入で再狭窄率は激減しています。当院においてもPCIにおけるステント使用頻度は現在約90%で、DESが70%を占めています。その結果、PCIの初期成功率は98%に達し、再狭窄率は約10%です。
このようにみると、DESの登場でPCIの問題点はすべて解決したかのように思えますが、実は近年、遅発性ステント血栓症(LST)と新規病変の抑制が課題となっています。例えば、DESは従来のステント(BMS)と比較して、施行半年以降の死亡と心筋梗塞の発症が多いという報告があります(Lagerqvist B. et al.: N. Engl. J.Med., 356, 1009-1019, 2007.)。その原因はLSTにあるといわれていますが、本邦におけるj-CYPHERのデータでは、LSTの発症率は年間0.25%と、それほど多くないことが明らかになっています。
一方、DESの登場で同一冠動脈の再治療は激減しましたが、新たな血管に新規病変が起こって再PCI を行う頻度は、DESとBMSで違いはありません。実際、当院においても経過観察中に新規病変にPCIを行う頻度は全体の1/5に達しています(図9)。そこで、薬物療法による2次予防が非常に重要となるのです。
心筋梗塞の2次予防にエビデンスがあるのは、アスピリン、スタチン、そしてRA系阻害薬ですが、カンデサルタンも日本人冠動脈疾患におけるステント施行後の長期予後を有意に改善(53%)したという報告が見られます。(Kondo J. et al.: Am. Heart. J., 146, e20, 2003.)。
中津
高血圧はpre心不全状態といわれ、心肥大や心不全を認めなくて、高血圧があるとBNP値が上昇することが報告されています。そこで、高リスク高血圧の1つである夜間高血圧とBNPの関係を検討しました。
対象は未治療の本態性高血圧症例118例(男性73例、平均年齢59.4歳)で、狭心症あるいは器質心疾患のある人は除外しています。また、LVEF<50%、LVMI>143g/m2、Ccr<70、NYHA≧U、BNP>100pg/mLの症例も除外しています。夜間降圧パターンが、昼間より20%以上下がる症例をextreme dipper(ED群)、10〜20%低下する症例をdipper(D群)、0から10%低下する症例をnon-dipper(ND群)、逆に夜間に血圧が上昇する症例をriser(R群)とし、この4群におけるBNPを検討しています。
その結果、BNP値はD群で最も低く、おそらく早朝高血圧や昼間高血圧が含まれていると思われるED群はD群より若干高く、夜間に血圧が下がらないND群あるいは上昇するR群が高い値を示していました(図10)。そこで、D群とND+R群を比較すると、前者のBNP値は11.80pg/mL、後者は20.37pg/mLで、両群間に有意な差が認められました。つまり、夜間に降圧がみられない症例のBNP値の平均値は20pg/mLで、対象の約35%を占めていました。おそらく、夜間高血圧による収縮期の過負荷がBNPをわずかに上昇させている原因と思われます。
以上のことから、高リスク高血圧として注意深い管理が必要な夜間非降圧症例のスクーリングに、BNP測定が有効であり、その際に注目すべきBNP値は20pg/mL、と考えられます。従来、BNP測定は心不全の病態把握のみに適用がありましたが、現在では心不全の疑いがあれば測定できますので、是非、日常診療に役立てていただきたいと思います。