重松
拡張期心不全とは、収縮機能が正常な心不全で、1980年代に提唱された疾患概念です。その特徴は頻度が高く、特に高齢の女性に多く、症状が強いため再入院率が高いといわれています。また、その予後は収縮期心不全とほぼ同様に悪いことが明らかになっています(Owan TE. et al.: N. Engl. J. Med., 355, 260-269,2006.)。
高血圧あるいは心疾患があると、まず拡張機能障害が起こり、そのうちで収縮機能障害を伴う症例は収縮期心不全へ、拡張機能障害だけでとどまっている症例は拡張期心不全に至ると考えられています。原因疾患としては、高血圧、糖尿病、肥満などMetSの構成疾患が考えられています。
収縮期心不全ではBNP値が病態把握に使われていますが、拡張期心不全でもBNP 値は上昇しますので、その診断に有効だと思われます。
治療に当たっては、CHARM-Preserved試験の成績が参考になります。この試験は、左室駆出率は保持されているにも関らず(LVEF>40%)、うっ血性心不全を発症する、まさに拡張期心不全を対象にカンデサルタンの有効性を検討しています。その結果、カンデサルタンは主要評価項目である心血管死および心不全による入院をプラセボに比して11%抑制し、試験実施医師の報告に基づく入院率および延べ入院回数は、有意に減少していました(図11)。ただし、低血圧を呈する症例もみられるので、その点には注意が必要です。
大木
今回ご出席の先生方のお話をお聞きして、四国の循環器疾患に関する将来の展望を考えた場合、結論としては「血管病」の予防に尽きるのではないかと思います。脳卒中(出血・梗塞)、心筋梗塞、腎不全はすべて血管の病気であり、一方では脳血管および頚動脈病変の密接な関連性、動脈壁弾性・左室拡張機能連関(ventriculo-arterial coupling)、あるいは心・腎連関(cardio-renal interaction)が最近のトピックスになっております。また心筋梗塞の収縮期不全はもちろん、拡張期心不全の危険因子としての高齢、高血圧、糖尿病、肥満、脂質異常、動脈壁弾性の低下を考慮すれば、MetSを含む全ての心血管系危険因子をことごとく除去する必要があります。そのためには、スタチンやフィブラート系薬を用いた抗高脂血症治療が必要です。
さらに高血圧から心血管イベントまでの病態進展には連続性が存在し(図12)、その連鎖に関してはアンジオテンシンUが深く関与していることを考えると、ARBを用いた早期かつ積極的介入は不可欠と考えられます。
平成20年度から、特定健診・特定保健指導が保険者に義務づけられることも、「血管病」の予防と医療費の抑制を視野に入れた試みである事は明らかであります。
このような観点からも、四国の中で多施設大規模試験を行うことにより、「血管病」を予防するための多くのエビデンスが構築されることを期待したいと思います。